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東京高等裁判所 平成2年(う)941号 判決

主文

原判決を破棄する。

被告人は無罪。

理由

本件控訴の趣意は、弁護人村木一郎及び被告人本人が提出した各控訴趣意書に記載されたとおりであり、これに対する答弁は、東京高等検察庁検察官検事京秀治郎が提出した答弁書に記載されたとおりであるから、これらを引用する。

一  弁護人の控訴趣意第二について

所論は、本件公訴の提起は、被告人の有罪を基礎づける証拠のないままなされた嫌疑なき起訴であり、原審段階で公訴棄却の判決がなされるべきであったのに、有罪の判決をしたのは違法である、というのである。

そこで、記録を調査して検討すると、本件起訴当時において、被告人が本件犯罪を犯したという嫌疑が存したことは明らかである。所論は、前提を欠き採用できない。

二  弁護人の控訴趣意第一及び被告人本人の控訴趣意について

所論は、原判決は、被告人が平成元年七月一〇日午後一一時一〇分ころ、同人の居室内において、妻A子の頭部を壁面又は床面等に打ちつけるなどの暴行を加え、その結果、同女を四日後に死亡させたものと認定しているが、被告人と妻A子が同時刻ころ右居室に在室した事実も、被告人が妻A子に暴行を加えた事実もないから、被告人は本件傷害致死につき無罪であり、原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認がある、というのである。

そこで、記録を調査し、当審における事実取調べの結果を併せて、所論に対し検討を加える。

原判決は、1 被告人と妻A子が平成元年七月一〇日午後一一時一〇分ころ、東京都品川区西五反田《番地省略》甲野四〇二号室に在室しており、2 被告人は、同所においてA子に暴行を加え死亡させたものであると認定している。

1  被告人とA子が同時刻ころ、甲野四〇二号室に在室していたかどうかについて

(一)  原判決は、在室していたことの根拠として、まず、被告人とA子が、同日午後一〇時ころ、同区東五反田《番地省略》「乙山家」前歩道上において、Bの経営する屋台のラーメン屋に行って飲食し、同日午後一一時ころ右ラーメン屋を出たこと及び右ラーメン屋から前記甲野までの距離は約二六三メートルであり、歩いても数分しかかからないことを挙げている。この認定は、原審証人Bの証言、同人の検察官に対する供述調書(ただし、第四項以下を除く。なお、右Bの検察官に対する供述調書によれば、被告人が右ラーメン屋に来たのは午後一〇時過ぎころであり、帰ったのは午後一〇時五〇分ころとなっている。)及び司法警察員作成の傷害致死被疑事件所在確認捜査報告書によるものであるが、右Bの供述によれば、同人は売上を帳面にもつけておらず、また、店に時計も置いていないで単に勘による供述であるというのであるから、同人の店には一晩に三〇〇人位の客があるということをも考え合わせると、同人のいう被告人の来た時刻や帰った時刻にどれほどの信用を置けるか甚だ問題であるといわなければならない。

(二)  次に、原判決は、同日午後一一時一〇分ころ四〇二号室からの物音をその隣人が聞いたことを挙げている。この認定は、原審証人D子及び同C子に対する各受命裁判官の尋問調書によるものである。まず、D子の供述によれば、「私は、七月一〇日は、被告人方居室の隣室である四〇三号室に泊まっていた。テレビ番組のニュースステーション(午後一〇時に開始し一一時一五分に終了する。)を見ていたが、その番組の終わりにある天気予報までは見ずにテレビを消した。物音が聞こえたのは、ニュースステーションの天気予報もまだやっていないと思われるころである。私がはっきり聞いたのは、ドスンという音と、ちょっと間をおいてドスンという音の二回で、隣の四〇二号室の方から聞こえた。その物音が聞こえた時は寝ていて、目をつぶって寝ながら聞いていた。そのあと寝てしまった。」というのである。しかし、物音が聞こえた時はもうD子がテレビを消した後のことであり、それが右ニュースステーションの天気予報を放送する前ころのことであるというのも勘によるものであるし、就寝直前の眠い時のことであるから、同人がいう時刻に同人がいうような音がしたという供述には、全面的な信用を置き難いのである。次に、C子の供述によると、「私は、被告人方の隣室である四〇一号室に住んでいる。七月一〇日は、午後一〇時から八チャンネルの現代の神秘サスペンス「三階の魔女、立てこもったインベーダー」を見た。来週の予告編を見て午後一〇時五四分からの「四季の詞」という番組は見ないで寝た。横になって本を読んだが、本を読み始めて三〇分位した時、四〇二号室の壁の方にドーン、ドーンという音を三回位聞いた。」というのである。しかし、同人の場合も、時計で確かめておらず、また、読書中の時のことであるから、同人のいう時刻に同人がいうような音がしたという供述には、全面的な信用を置き難いのである。

しかも、右のように、四〇二号室の被告人方居室の両隣のD子、C子がほぼ同じ様な音を聞いていることからすれば、もし、その音が、被告人がA子の頭部を打ちつけた音だとすると、それは床面であろうと思われる。何故なら、それが四〇一号室との境の壁に打ちつけたものであれば、四〇一号室には極めて大きく、反対の四〇三号室には全く聞こえないか、はるかに小さく聞こえた筈であるし、四〇三号室との壁に打ちつけたとすれば、その逆である筈だからである。そして、もし、被告人がA子の頭部を床面に打ちつけたとすれば、四〇一号室や四〇三号室よりも、その真下の三〇二号室に最もよく聞こえた筈である。しかし、三〇二号室の住人である当審証人Eの証言によれば、「私は、当日そのころ在室し、午後一二時ころ布団に入ったが、上でドシーンというような音は全く聞かなかった。」というのであって、右Eの証言をも考え合わせると、平成元年七月一〇日午後一一時一〇分前後に四〇二号室でドスンあるいはドーンという音を聞いたというD子及びC子の証人尋問調書の信用性は、その時刻や音の聞こえてきた方向の点で一層疑わしいといわなければならない。

(なお、原判決は、「仮に、Eが在室していたとしても、本件暴行が壁面にA子の頭部を強打するものであったとすると、Eにとっては、四〇二号室で発生する通常の生活音と同視され、特に記憶に残らないということも十分考えられる。」旨判示しているが、床面に強打した場合のことには触れていないし、他方では、「D子やC子の聞いた音は、入居以来これまで両名とも聞いたことのないような異常なものであった。」旨判示しているのであって、矛盾している。)

(三)  原判決は、被告人の原審公判における「被告人とA子がラーメン屋を出たのは七月一〇日午後一二時ころであり、その後、翌一一日午前零時四五分ころに四〇二号室に帰宅した。」旨の供述について、被告人自身の捜査段階における供述を変更していて信用できない旨判示している。

しかしながら、被告人の供述をみると、①ラーメン屋に行った時刻については、捜査段階では、「午後八時ころ」と供述していたのに、原審公判では、「午後一〇時ころ」と訂正して供述し、②ラーメン屋からの帰途については、逮捕直後は、「まっすぐ歩いて帰った。」と供述していたが、その後、「自分は五反田駅西口の電話ボックスのピンクチラシの張り具合を見て回り、A子は甲野の一階の深夜スーパー(パール西五反田店のこと)で買物をしてから帰宅した。」と供述し、さらに、原審公判では、本件起訴後にチェリー五反田店のレシートがA子の財布から発見されたことから、「自分が電話ボックスのチラシを見て回っている間に、A子は同店に買物に行ったものと思う。」旨を付加して供述しているなど、本件犯罪の成否に直接関係のないことを含めて供述を変更しているのであって、これらのことに加えて、被告人は七月一〇日夜は飲酒していたこと、取調警察官である原審証人Fの供述からは、同人の取調べに対して、被告人自身がその日の行動等をよく思い出せずに供述していたことが窺えることを考え合わせると、被告人は、同日夜の行動等については、よく記憶していなかったのではないか、また、翌朝はもちろん同月一二日逮捕された後の捜査段階においても、十分には記憶が喚起されていなかったのではないかとみられるのである。したがって、被告人が同月一一日救急隊員や医者に対して、「A子は、午後一一時ころ、甲野の出入口で転んだ。」旨述べたことや、捜査段階でラーメン屋を出た時刻及びマンションに帰宅した時刻について供述したことは、正確なものといい難いとともに、供述を変更したことを理由として、被告人の原審公判における前記供述の信用性を否定するのは妥当とはいえない。

また、原判決は、「被告人は、被告人及びA子が、七月一〇日午後一一時ころ四〇二号室に在室したことを認めた上でC子及びD子の聞いた音の発音状況について弁解を行う供述をしている。」旨判示しているが、原判決も判示するように、被告人は、捜査段階においては、一貫して、「ラーメン屋を出たのは午後一一時ころから午後一二時ころまでの間である。」と供述しているのであって、帰宅したのが午後一一時ころであると限定していないのであるから、「同時刻ころ在室していたことを認めた上で」と判示しているのは、独断に過ぎる。

(四)  さらに、被告人とA子が七月一〇日午後一一時一〇分ころ四〇二号室に在室していたのかどうかの認定に関して重要なのは、チェリー五反田店のレシートの存在である。このレシートは、被告人が本件起訴後勾留中の同年八月四日に取調警察官のFとともに被告人方居室に赴いた際、同室内にあったA子の黒皮二つ折り財布から取り出して同警察官に手渡したものである。そして、このレシートは、同店で同年七月一一日午前零時二一分に、一五五円の品物二点と一二八円の品物一点を購入したことを示している。ところが、同警察官は、このレシートについて十分な裏付け捜査を早急にしなかったため、同店の記録から購入者が男性か女性かなどを特定することができなくなっている。

原判決は、このレシートは、被告人が犯行後、買物に行って受け取ってきたものと考えられるとしているのであるが、そのような疑いを抱かせる証拠がないばかりか、右財布はA子のものであるから、同女が買物をした際のレシートであるとみるのが原則であるし、被告人がA子に暴行を加えて意識不明に陥れた後、徒歩で九分(司法警察員作成の傷害致死被疑事件所在確認捜査報告書による。)も離れたチェリー五反田店までこのような品物(即席麺類やお新香とみられる。しかも、これらは当時営業をしていた被告人居住の甲野一階のパール西五反田店でも買えるものである。)をわざわざ買いに行ったというのも、いかにも不自然なことである(もし、これが被告人のアリバイ作りの為であったとすれば、被告人はこのレシートの存在を早くから主張したであろうと思われるが、そのような事情は全く窺われない。むしろ、被告人はこれがチェリーのレシートであることを知らずに、取調警察官に対しては、A子がパール西五反田店で買物をした旨の自分の供述を裏付ける証拠であるといって、手渡しているのである。)。そうすると、このレシートは、被告人とA子がラーメン屋に行った後、A子がチェリー五反田店に立ち寄って買物をした証拠ではないかという疑いを払拭しきれないのである。

以上のとおり、被告人とA子が平成元年七月一〇日午後一一時一〇分ころ、甲野四〇二号室にいたという事実は甚だ疑わしいと考えられる。

2  A子が被告人の暴行により死亡したものであるかどうかについて

(一)  原判決が(事実認定の補足説明)の項の三の1に掲げる関係証拠によれば、原判決認定のとおり

(1) A子の頭部には、その左側頭部に擦過打撲傷があるほか、左側頭部を中心とする頭蓋骨骨折、左側頭蓋底骨折、大脳右半球のほぼ全面にわたる脳硬膜下出血及び主として大脳右半球に対側性脳挫傷の傷害があり、その脳が腫脹していること

(2) これらの傷害は、同女の左側頭部に横方向から強い外力が加わったことによって引き起こされたもので、このために同女は脳機能障害の状態に陥り、死亡したと推定されること

(3) 同女の左側頭部擦過打撲傷の成傷状況からすると、同女の左頭部に硬い鈍器ないし鈍体による強い外力が加えられたと推定され、かかる鈍器ないし鈍体としては、打撃面が広い、床や壁などが考えられること

の各事実が認められる。

(二)  原判決は、被告人がA子の左側頭部を壁面もしくは床面等に強く打ちつけるなどの暴行を加えたものと認定しているのであるが、前記D子及びC子の各供述からみて、A子の頭部の傷害が被告人の暴行によるものであるとすれば、それは床面に打ちつけたものとしか考えられない。この点については、原判決が証拠として引用する司法警察員作成の実況見分調書によれば、右二人の実況見分立会人が当時聞いた音に似た音であると指摘したのは、玄関内廊下、床面又は床に敷いた布団上で行った実験結果であったこと、D子及びC子に対する受命裁判官の各証人尋問調書によれば、当日聞こえた音は、四〇二号室の玄関内廊下側(冷蔵庫西側)の地点付近の床に、約一〇センチメートルの高さから人間の頭大の石膏(重さ約六・四キログラム)をズボン(重さ五〇〇グラム)でくるんだ状態で叩きつけた時の音、もしくは同室の居室中央付近の布団二枚の上に、約一〇センチメートルの高さから右石膏を前同様の状態で叩きつけた時の音に最も似ていることが認められるのであって、壁面に打ちつけたものであることを窺わせる証拠はない。ところで、原審証人柳田純一の証言によれば、

「A子の頭部の傷害特に脳挫傷は、寝ている人の頭を二〇センチか三〇センチ持ち上げてそれを床に叩きつけるというような方法では起こりにくい。座っている人の頭を思い切り床にぶつけたぐらいでは、絶対できないとはいえないが、大したことはない。また、床の場合、肩が邪魔になってしまうから、直接側頭部を床に打ちつけるというのは困難である。」というのであり、被告人がA子の左側頭部を床面に打ちつけるという方法によってその頭部に本件のような傷害を負わせることは難しいことが窺われる。もっとも、当審証人高津光洋の証言によれば、「寝ている人間の頭を三〇センチほど持ち上げて、そのまま床に叩きつけるというような場合でも、力の強さによっては、本件のような傷害が生じ得るが、肩等が邪魔することがあるので、例えば床なら段差のあるところ、あるいは平坦な場合は無抵抗の状態である必要がある。」としている。なお、同証人の証言によれば、「右段差は、四〇二号室の出入口からの廊下と洋室床面との間の一一・五センチメートルの段差でもって足りる。」とされている。それにしても、本件において、被告人がA子の左側頭部を特に右段差を狙って思い切り打ちつけた、というのもA子が抵抗することを考えると困難であろうし、被告人とA子の間柄及び記録上認められるそれ以前の両名の行動状況に照らして考えにくいことである。

結局、A子の傷害が被告人の暴行によって生じたとする点にも疑問が残ると考えられる。

(三)  被告人は、捜査及び公判段階を通じて一貫して、「A子の死因は同女が前記甲野の出入口階段及び前記四〇二号室の浴槽内で転倒して頭部を強打したことにある。」と主張し、「A子は右階段で転倒した後、起き上がって階段を上り、自力でエレベーターに乗り込み、エレベーターから降りると四〇二号室まで行き、室内に入ってからは、トイレに入ったり、被告人とふざけ合ったり、自力で浴槽内でシャワーを浴びるなどしていた。」と供述している。

(1) 原判決は、被告人の右供述には、A子が階段で頭部を強打した後、何ら意識障害に陥った形跡が認められないこと、A子が階段で転倒した時の状況に関する供述に不自然かつ不合理な変遷がみられることなどを理由として、被告人の前記供述を信用できないと判示している。

しかしながら、原審証人柳田純一の証言によると、A子のように頭部打撲により脳挫傷を負った者に起こる受傷直後の意識障害には、短時間の一過性のものもあって第三者が見落とすことがありうることが窺われるし、前記のように、被告人は、当夜の行動等については、よく記憶していなかったのではないか、また、捜査段階では、十分に記憶が喚起されていなかったのではないかとみられるのであって、原判決の挙げる理由に重きをおいて、被告人の前記供述の信用性を否定するのは妥当とはいえない。

(2) ところで、原審証人柳田純一の証言によっても、当審証人高津光洋の証言によっても、A子が甲野出入口階段で転倒した場合、本件のような傷害を負う可能性があることが認められる(なお、右高津証人は、A子の左側頭部頭蓋骨の外板の骨折線の形状からみて、左側頭部への衝撃は一回よりも二回の可能性が大きいとしながらも、右階段での転倒による可能性を認めている。)。

問題は、本件のような傷害を負ったA子が、意識障害に陥ることなく、被告人の供述するような行動をとりうるかどうかである。

この点につき、原審証人柳田純一は、「本件のような打撃を受けて脳傷害を負った直後に立ち上って自ら歩行するということは、絶対とはいえないが、きわめて珍しい。脳挫傷が起こるということはその前に脳振とうが起こった筈で、その症状は意識障害であり、その時間は非常に短いかも知れないがあったことは確かである。意識障害が発生しても障害の程度が薄れて立ち上ったり歩行したりすることは確率的には少ないと思う。僕としては余りないだろうと思うが、否定はできない。その確率は、万分の一というのではなく、何十分の一という気持ちはある。」と供述して、その可能性を全面的には否定していないのである。また、A子が受傷後、最初に同女を診断した医師である原審証人Gは、「被告人から事情を聞いて医学的に例外的なケースだとは思ったが、その傷が犯罪によるものではないかなどとは全く考えなかった。」と証言している。当審証人高津光洋は、A子の頭部傷害のひどさから、「A子は、受傷直後から行動能力はなかったか、あっても制限されたものであり、合理的・合目的行動は不可能であった可能性が推測される。」と供述しているが、絶対に不可能であるとはいっていないし、原審証人柳田純一が本件の脳挫傷の程度は比較的軽いと証言していること並びに前述した原審証人柳田及び同Gの供述をも考え合わせると、高津証人の証言によってA子が受傷直後から行動能力がなかったとはいい難いのである。

3  そうすると、原判示事実は、被告人とA子が平成元年七月一〇日午後一一時一〇分ころ、前記甲野四〇二号室に在室したとする点でも、A子の死が被告人の加えた暴行によって死亡したとする点においても、合理的な疑いがあると認められ、かつ、被告人の弁解するような状況によってA子が死亡することも起こり得ないものではないと認められるから、原判決にはこの点について事実誤認があり、その誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかである。論旨は理由がある。

三  よって、刑事訴訟法三八二条、三九七条一項により原判決を破棄し、同法四〇〇条ただし書により被告事件について更に判決する。

被告人に対する本件公訴事実の要旨は、「被告人は、平成元年七月一〇日午後一一時一〇分ころ、東京都品川区《番地省略》甲野四〇二号室被告人方居室内において、妻A子(当時二二年)に対し、同女の頭部を床に打ちつけるなどの暴行を加え、よって同女を、同月一四日午後零時三三分ころ、同都渋谷区恵比寿二丁目三四番一〇号都立広尾病院において、急性硬膜下血腫及び脳挫傷に基づく脳機能障害により死亡させたものである。」というのであるが、前示のとおりその犯罪の証明がないから、刑事訴訟法三三六条により、被告人に対し無罪の言渡をすることとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 竪山眞一 裁判官 虎井寧夫 裁判官小田健司は病気のため署名押印することができない。裁判長裁判官 竪山眞一)

〈以下省略〉

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